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インドネシア最東端のイリアンジャヤ(パプア)州は、世界的に有名なプリミティブ・アートの“宝物殿”です。例えば、南西部のアスマット地方の原始美術。その芸術性の高さは、ニューヨークにあるメトロポリタン美術館に「アスマット・コーナー」があることからも窺い知ることができます。プリミティブ・アートは、日本ではまだまだ愛好家そして理解者が少ないのが現状ですが、欧米諸国では、芸術品コレクターにとって『いつの日か、アスマット彫刻を手に入れたい』と、垂涎の的なのです。ところで、そのアスマット彫刻を手に入れたコレクターが、その次のステップ、つまり究極的なコレクションとして入手を切望する原始美術が、ここに紹介する「コルワル(Korwar)」彫刻です。イリアンジャヤ北部のチェンドラワシ湾一帯、特に、ビアク(Biak)島やヤーペン(Yapen)島近辺で、古来、祖霊像として彫られていたものです。
古くは、風化した死者の頭蓋骨を載せるための“受け皿”的な意味で、胴体部分の木彫が使用されました。つまり、胴体の木彫に、人間の頭蓋骨を取り付け、それを墓地や聖なるエリアに設置しておいたのです。後に、コルワル像は、頭蓋骨を収納する空洞を胴体上部に彫り上げる形に発展しました。雨ざらし状態だった頭蓋骨部分に屋根を付けたといってもよいでしょう。そしてキリスト教の到来と共に、頭蓋骨を永遠に保存する風習が廃れ、これに伴って、頭蓋骨部分までをも木彫に刻む方法が生み出されました。そして、写真のようなコルワルが誕生したのです。しかし、コルワル像は、誰もが作れる物ではなく、村の長や部族長などの位の高い人物のみが対象でした。このため、本物のコルワル像は、非常に少ない数のみ製作されました。それも、多くが、オランダ植民地時代に、宗主国へ持って行かれ、今ではオランダやヨーロッパ各地の民族博物館でのみ見ることができるのです。
ここに紹介するコルワル像は、相当の年代を感じさせる品ですが、実はレプリカです。破損個所までもが、見事に復元されています。但し、素材の木は、イリアンジャヤのビアク島産のもので、また製作者もビアク人です。サイズは、高さが28cm、最大横幅が10cm、最大奥行きが10.2cm。重さは約655グラムです。本物のコルワル像の入手が極めて困難な状況下にあっては、ここまで完成度の高いレプリカは、十分芸術的、民俗学的な価値を有するものと思います。 インドネシア文化宮は、インドネシアの24時間ニューステレビ局『メトロTV』東京支局がプロデュースするインドネシア情報発信基地です。
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